【PICK UP ARTIST】Rei Harakami “ベッドルームから生まれた叙情的な独自の世界”

(画像出典:https://ringsounds.bandcamp.com/track/first-period)

いつもとは少し雰囲気が変わり、PICK UP ARTIST第4回は、国産エレクトロニカの重要人物、Rei Harakami(レイ・ハラカミ)を取り上げます!98年のデビュー時から確立していた曇りのあるシンセサウンド、変則的なリズムとエフェクト処理によって生み出される音響空間は、海外からも高評価を集めました。その後、くるりや矢野顕子といったアーティストらのリミックス/プロデュースを経験し、4thアルバム「lust」は矢野顕子に「世界遺産に決定。文句無し。」と言わしめるほどの最高傑作となりました。しかし、2011年7月27日の40歳の時、Rei Harakamiが脳出血により急逝してしまったことで、「lust」は最後のオリジナルアルバムとなりました。今回は、そんなRei Harakamiの軌跡を辿りながら、彼が目指した”自分が感動する音楽”、”気づいたら寝てしまうような音楽”の魅力をご紹介したいと思います。

目次

  1. 心に沁みわたる、風景画のようなサウンド
  2. ハラカミ節サウンドの秘密
  3. 数々のコラボワークから見るその魅力
  4. まとめ

心に沁みわたる、風景画のようなサウンド

Rei Harakami – owari no kisetsu

この曲は、Rei Harakamiが遺した最後のアルバム「lust」に収録されている。細野 晴臣の「終わりの季節」をカバーしたものとなっており、歌声もRei Harakami自身のもの。実は、Rei Harakamiの作品で彼が歌っている曲はこの曲のみである。窓にはじけ飛ぶ水滴のような曇りのあるシンセサウンドと緩急のあるリズムに、Rei Harakamiの純粋で穏やかな歌声が非常に心地よく、終わりの季節、肌寒い季節に聴けばいつだって感傷的な気持ちを呼び起こしてくれる。

この、まるで風景画のようで匿名性が感じられる世界観が、Rei Harakami節とでも呼ぶことができる、彼のサウンドの特徴である。本来、「lust」に収録される予定はなかったようだが、アルバムを一つにまとめる存在として機能していることが、アルバムを通して聴くとよく分かるだろう。

この曲ができたきっかけは、矢野顕子がライブで「終わりの季節」をRei Harakamiバージョンで歌いたいと依頼したことから、作曲中にイメージを掴むためにウォークマンのマイクで簡易的に歌声を入れたことが始まりだったという。矢野 顕子が歌っているものは、2人のコラボプロジェクト、yanokami名義でリリースされており、Apple MusicSpotifyで視聴可能だ。Rei Harakamiの音源はSpotifyのみのリリースとなっているが、この季節にぴったりな作品となっているため、散歩しながら、もしくは夜中に部屋で一人でなど、じっくりとその世界観に耽って愉しんでほしい。

ハラカミ節サウンドの秘密

Rei Harakami – Cape

この「Cape」が収録されているのは3rdアルバムの「Red Curb」と言うアルバム。逆再生されたシンセ音や、ピッチ・ベンドで滑らかに曲げられた音程、その独特の曇りのある音色で構成されたストーリー性のある楽曲となっている。Rei Harakamiはデビュー以来、他界するまで一貫してRoland社のSC-88Proという音源モジュールをメイン音源として作曲を行っており、一つの機材からここまでの多彩な表現とクオリティの楽曲を生み出したことで世界中に衝撃を与えた。


SC-88Pro (画像出典:Wikipedia

彼の生み出す音楽には、電子音楽、エレクトロニカ、実験音楽、アンビエントなど様々な呼称が思い浮かぶが、一貫していることは肉体的な感覚を伴わないエレクトロ・ミュージックであるということだ。Rei Harakami自身も、TOWER RECORDSのインタビューにおいて、クラブに通っている時期はあったが、「相容れないものを感じていた」「家で作ってたから、家で聴けるものを」と発言している。

1stアルバム「Unrest」ではハラカミ節もさることながら、幾ばくかダンス・ミュージックとしてのテクノの名残も感じられる。当時は、ジャンルや周りを気にしてしまった結果、「テクノをやろうとしていた感じはある」とのことだが、それ以降、彼の音楽はジャンルに縛られないRei Harakamiとしか言い様の無いものとなっていった。それは彼自身が口にした「すぐに寝れる音楽を作りたい」という通り、ベッドルームから生まれたエレクトロ・ミュージックが、今も世界中の人々の部屋で聴かれるものとなったのだった。


(画像出典:letter music

数々のコラボワークから見るその魅力

3rdアルバム「Red Curb」をリリース後、国内外で一気に認知を広めたRei Harakamiにはリミックスやコラボワークが急激に増えた。その中で、同郷・京都出身のくるりの「ばらの花」リミックスを耳にした矢野顕子は、すぐにその才能を見込んでハラカミに連絡をしたという。そのことがきっかけとなり、Rei Harakamiと矢野顕子によるユニット「yanokami」が誕生した。

また、日本におけるインドの古典楽器、タブラ奏者の第一人者であるU-Zhaanは、インドでの1年間の修行の後、日本で最初に聞いたRei Harakamiの曲に感銘を受けたことからコンタクトを取り、「U-Zhaan × Rei Harakami」というプロジェクトが始まった。

下記に掲載したライブ映像は、Rei Harakamiの他界後、U-Zhaanのライブに矢野顕子が出演し、くるりの「バラの花」Rei Harakami リミックスを演奏しているものだ。Rei Harakamiの遺した音源に正確にあわせる確かな演奏力と矢野顕子の歌声が混ざり合い、美しく幻想的なステージとなっているので、是非その世界観に触れてみて欲しい。

まとめ

以上、今回はヒップホップや昨今のインディーシーンとは異なる文脈のアーティストであるRei Harakamiをご紹介しました。今回の記事では取り上げられないほど、沢山の素晴らしい楽曲がYouTubeにも載っているので、是非、この寒い季節に感傷に浸りながら聴いてみることをオススメします。ちなみに、オススメのトラックは「June」「にじぞう」「Glimglim」など、アルバムとしてはやはり「Lust」から入るのがオススメです。また、世界中からのR.I.P.と、多くのアーティスト、メディアからの追悼はいかに彼と、彼の音楽が愛されていたかが分かります。若くして亡くなるアーティストはいつの時代も死後に評価されることが多いように感じますが、生前に何を想って音楽を奏でていたのか、想像することも広い意味で音楽の楽しみ方なのかもしれません。

最後に

最後まで読んでいただき有難うございました。読者の皆様のリクエストにもお答えしたいと考えておりますので、気になるアーティスト、テーマなどがあれば、CONTACTもしくはp.l.a.n.contactus@gmail.comまでご意見、ご感想を頂ければ幸いです。また、読者様の疑問や質問に答えたいと考えておりますので、投稿へのコメントも大歓迎です。これからも引き続き、よろしくお願いいたします。

by Hiromu Fukuoka

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